もう、なーんにもせぇへん!
高らかにひとり宣言して、どかりと座る。
けれど、なーんにもせぇへんのは、案外むずかしい・・・。
そこで取り出したるは、針と糸。
たんすの中を、
「なにか刺すものはいねが~!」(東北のお祭りの「泣く子はいねが~!」風)とひっかきまわす。
見つけだしたるは、古い手ぬぐい。
にんまり顔でふたたび、どかりと座る。
模様を選んで、さっそくちくちくちっくん。
無心にちくちくちっくん。
なんとなく、飽きてきたら糸の色をかえて、ちくちくちっくん。
ちょっと肩がこってきたら、模様をかえて、ちくちくちっくん。
きもちのうえでは、布のキャンバスに針を泳がせ、
自由に絵を描いているかのごとく、スイスイと。
実際は、ちくちくちっくん。
縫い目もまったく揃っておらず。
それでも以来、座るとつい裁縫かごを引き寄せては、ちくちくする日々。